か、子牛(CALF)か、畜牛(CATTLE)か、あるいは食用の牛肉(BEEF)なのか、子牛肉(VEAL)なのか。それによってまったく別の単語を使い分けているのです。
日本語でこれに相当するのは、“RICE”かもしれません。英語なら一語でいえるのに、日本語では蒔く前の種子なら“籾(もみ)”、芽がでれば“苗(なえ)”、田んぼに植えてあるのは“稲”、収穫したのは“米”、でも炊いてあるのは“飯’’、大量の水で炊けば“粥”といった具合。これら全部を統括する表現がないのです。しかたがないので、新聞の見出しでは、“コメ間題”などと、まるで外来語のようにカタカナで、“コメ”と書いています。
話がちょっと寄り道になってしまいましたが、つまりどの文化でも、自分たちにとって身近で大切なものには、細かく名称を与え、十把ひとからげにまとめたりはしないということです。
さて、本題にもどって、“愛”です。英語でもLOVEでだいたい用が足りてしまいます。ところが、ギリシアの人たちにとっては“愛”には微妙なニュアンスが多々あって、とてもひと言でまとめてしまうわけにはいかなかったようです。
ここではそのうち有名な三つの言葉、エロース、フィリア、それにアガペーの三つについて、すこし詳しく見てみましょう。
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